2009 北海道ツーリング記
<四日目>

( 2009年 7月 15日 (水))

■ 知床攻め
 朝4時。テントにあたる雨音と、またしてもカラスの鳴き声で目が覚める。(朝の鳥ったらスズメじゃなかったんか?) 辺りはもう明るい。朝から雨かぁ…凹むなぁ…とかぼやいても雨は変わらない。このまま撤収してもアレだから二度寝してみる。次に気が付いたのは6時。辺りを見回すと自分だけになっていた。皆さん(といっても二組)お早いんですなぁ。

 前日の残飯にガラスープをかけてお粥にし、同じく残り物のから揚げをつまみに朝ごはんとする。昨夜の冷えたご飯をあったかく食べるにはどうしたらいいか考えた結果だ。我ながら微妙にナイスプレーだった。朝食が済んだら自然と始まる撤去作業。雨の撤収は初めてだったが、テントの防水性能がまだ衰えていないらしく割とすんなり片付いた。(フライシートを軽く叩くと水玉が転がり落ちる) そして7時過ぎ、湖畔を後にする。もちろん合羽は装着。

 R39を北上して網走方面に戻る。そこからd1083(4桁って凄くね?)を少し通ってR244へ。今日の目的地は知床半島。だが天気が悪いのでいけるところまで行くだけの移動日になりそうだ。なるべく観光名所を回るツモリではいるけどね。

 藻琴湖、涛沸湖は華麗にスルー。この手の湖は沢山見たので特に気にしてなかったらアッサリ通り過ぎた。事前情報も少なかったので仕方なし。

 それにしてもこのR244。前面に山並みが見えて中々景色が良い。まっすぐ道路は相変わらずだけど、ちょっと雰囲気が違うこの辺の景色は、見て回った中でも上位に入る広大さだった。果てが見えない直線路もいいけど、山に消える直線路ってのも中々良いね。


こんな空模様だけど今までとちょっと雰囲気が違う
 R244からR334に変わり、カクっと左折すると道が少々細くなる。追い越し禁止区間である為、トラックが車の列を先導している。つまらない違反で捕まるのもアレなので、列に並んでマッタリ進む。ちなみに、北海道のドライバーは大抵、2輪が後ろに付くと譲ってくれる場合が多い。基本的に追い越し可能な白点線道路がほとんどなので、早い車はバンバン抜いていく。そんな中、無駄に頑張るのが首都圏ナンバー。プライドが高いのか気が付いていないのか不明だが、ちょっと迫っても一向にどかない。特にワインディングではアッサリ避けてくれほうがお互いハッピーだと思うんだけどねぇ。

 海岸沿いに出ると景色が開けるが風も強くなる。うーん、今回はホントこんな天気ばっかりだなー。


岬の重なり具合がまた美しい
この道路も100km/h近い速度で流れていた
 特に寄り道することもなくオシンコシンの滝に到着。観光バスが止まってるくらいの観光名所なので人も多い。トイレ脇のスペースにちゃっかり駐車したら徒歩で滝を見に行く。

 この滝は岩肌から豪快に流れ落ちていて中々迫力があった。R334を走りながでもチラっと見えるが、観瀑台まで行くと結構な迫力で滝を見上げることが出来る。滝好きな自分としては評価はまぁまぁ。(辛口) 通り道だし、見ておいて損はないと思いますよ。(笑)


木々の中にあるのでR244からはちょっと見難い
写真じゃしょぼいけど幅が広くてそこそこ迫力がある
 観光客(ほとんど老人)が増えてきたので退散。そのままR334を進み、道の駅ウトロで休憩。微妙に寒いので暖を取ると共にトイレ休憩。雨は若干弱まったりするけど、降り続けているのは変わらない。路面もびしょ濡れなのでクルマの跳ね上げ水が結構かかりとても不快。(コッチは凄く汚れる) 場合によっては対向車に水溜りの水を掛けられることもしばしば。ペースも上がらないし、心まで濡れちまうね。

 更に北上すると、知床五湖に通じるd93に逸れ、適度なワインディングを走ったら突き当たりの駐車場まで進む。この駐車場、観光シーズンのせいかしっかり有料。係員が寄ってきて100円取られる。駐車場が有料だったのは旅中ここと支笏湖だけだったなぁ。

 知床五湖はその名の通り五つの湖からなるわけだが、案内板によると全部見て回ると2時間かかると書いてある。っていうか、普通にハイキングコースなわけですな。流石にそこまでガッツリ回る元気はなかったので、30分ほどで回れる二湖だけ見る事にした。かなり細いあぜ道をさっさと歩いていく。(山道は昔から得意。(笑)) 雨のせいで地盤が緩んでおり、足元が悪くてなんかこう、グチャグチャだったので合羽の裾に気を使った。


こんな細道を入っていくんだもの
普通に熊とか遭遇しそうなシュチュエーション
 10分ほど歩くと一湖が現れる。なるほど水は澄んでいるし水も冷たくていかにも大自然な感じがする。看板にも書いてあるが水深30mもあるとは思えないほど小さい湖だった。湖っていうか池っぽい気もしつつ。


草が生い茂る中に突然現れる一湖
案外深いことにちょっと驚く
 順路通りにうねうね進むと二湖が見える。こちらは山道からチラっと見えるだけで、全部見るには先の2時間コースに進まないとダメらしい。途中、熊が爪を研いだ後に人だかりが出来ていた。回ってるガイドさんの説明を、耳をデッカクして何気に聞くのはいつものこと。(笑) ほぅほぅ、ここで熊がねぇ…。(笑)

 雨も止まないし、寒さもあるので今回はこの二つの湖で断念した。いずれは全部制覇しに来たいな。どうせみんな同じような感じだと思うけどな。ちなみに見に来てた人たちは殆どコンビニ合羽着用だった。


微妙に見える二湖
湖自体の美しさは間違いない
 駐車場に戻ると、雨脚が強まっていた。これから走る予定の知床縦断道路は、峠を越えるのであまり悪天候では行きたくないが、戻るわけにも行かないので仕方がない。気合を入れてバイクを進める。R334に戻り、羅臼方面にハンドルを切る。この時点でかなりの雨になっていた。

■ 最悪の事態
 ここからが悲劇の始まりである。降りしきる雨は徐々に強さを増し、遂に土砂降りとなって地面に叩きつける。この日は朝から半帽だったのだが、普通に雨が飲めるレベルでじゃじゃ降り。スクリーンも全く役に立たないレベルの大雨となった。おまけに羅臼峠付近では霧も出て15mほど先までしか見えなくなる。その上、ワインディング+アップダウンが続く峠道。流石にこれには参った。視界の悪さに徐行運転の車が多く、急ごうにも急げない状況も災いしたね…。その上寒いんだからタチが悪い。

 寒さに震えながら必死の思いで峠を越え、やっとの思いで羅臼方面に抜けて海岸線に出る。右折してすぐの道の駅に非難。この雨で多くのライダーがここに非難していた。ぐは〜、びしょ濡れだよ…。知床縦断道路は人気の道路になってたと思うけど、全然楽しめなかったなぁ。ちなみに路面的には伊豆スカのほうが走りやすくて快適です。(笑)

 道の駅内にある展望台とやらに向かうベンチで状況を確認すると…合羽の上着ポケットから水がじゃーっと出てくる。そう、そこは携帯とデジカメが入っていたポケットだった。見事に浸水。案の定、電気機器の液晶画面はチラついてすぐ消えてしまう。携帯に関しては充電ランプが付きっぱなし状態。充電なんてしてないんですけど!(笑) 携帯、死ぼんぬ…。

 旅の予定や寄り道スポットを携帯に保存していた為、データが参照できないのはかなり痛かった。でも仕方がないので記憶を頼りにこの先のルートを検討する。この雨じゃどこへ行っても観光どころじゃないので、携帯の復旧に努めることにする。とりあえずは近くのドコモショップに行けばなんとかなるかもと思い、道の駅の観光案内所で聞いてみた。すると、60km程離れた中標津町まで行かないとないとの事だった。流石は北海道。関東感覚とのギャップを感じるぜ。(笑)

 ちなみに、合羽内の浸水の原因は寒さだった。ロンTにTシャツを重ね着し、その上にウィンドブレーカー、そしてその上に合羽を着ていたのだが(これでも寒かった)、冬でも着れるウィンドブレーカーの襟が合羽と同じくらいの長さだったのでそこから浸水しまくった模様。寒さがなければこんなことにもならなかったろうに…。この夏の異例な気候には、やられっぱなしだね。

 とりあえず携帯のことは忘れて、しばし雨宿り。一向に雨は弱まる気配を見せない。仕方がないのでびしょ濡れの合羽を着こんで先に進む。お昼はこの先のまるみ食堂でとる予定なのだ。そこまでは頑張って進むことにしよう。

 相変わらずの土砂降りの中を突き進む。路面に出来た水溜りは普通に川となり、80km/h近い速度で突っ込むと幾らかハンドルを取られる(軽めのハイドロブレーニング現象)。前屈みになり、スクリーンに隠れながら走ること15分。目的のお店が左手に見えたのでウィンカーを出して駐車場に停める。

 びしょ濡れすぎて流石に萎える。お店にもちょっと迷惑だよね。申し訳ありませんでした。タオルで合羽を拭い、ヘルメットを脱いだらメニューを眺めてみる。ここで食べようと思ってたのは何だったっけな。イクラ丼だった気がするが…? 結局思い出せないので、まるみ定食を頼んでみる。2300円という値段からしたら下手なものは出てこないだろう。心身共にずぶ濡れになったので、少々凹み気味に、あまり期待しないで待つこと数分。出てきた定食を見て絶句した。まるみさん、本気っすね。(笑)


カメラが濡れて曇ってるが、確認できるだろうか
タラバ蟹の太い足が2本に毛蟹が丸々一杯
つぶ貝のつぼ焼きが裏に隠れており、海鮮付け合せの他、丼の鉄砲汁まで
 出てきた時、ちょっと笑った。明らかに箱に入りきれてない。蓋を閉める気がないというか、物理的に入るわけないだろっていうこの盛付け。蟹用のハサミが付いてくるのでジョキジョキ解体してガシガシ頬張る。アツアツの鉄砲汁で冷えた身体が温まる。外の雨は一向に弱まらないので、じっくり時間をかけて完食。(かけてっていうか掛かっちゃった感じだけど) これで2300円はむしろ安すぎるんじゃないかと思える定食だった。

 13時過ぎだっただろうか。1時間半ほどゆっくり食事をした後、外に出てみても全く状況は変わらない。つーか、さっきより強くなってないか? そうか…。やっぱり天は我を見捨てたか。(大げさ) びしょ濡れのバイクに跨り、エンジンに火を入れたら気合を入れて車道に飛び出す。

 R355は特筆することもない直線路で、ひたすら走り続けるだけであった。景色も何もあったもんじゃない。ただただ移動する。標津町まで到着したら今度はR272を右折して中標津町を目指す。そう、狙いはドコモショップ。なんとか携帯だけでも復活させる為だ。しかし…ここでもまた一悶着起こるのである。ホントに今日はツイてない日だ。
■ 無駄な掛け合い
 中標津町に入ると、幾らか賑やかになる。道の駅で得た情報の通り、東武サウスヒルズなるショッピングモールに到着し、ドコモショップに駆け込んだ。対応したのは40歳くらいの真面目を絵に書いたような男。嫌な予感がしたが案内されたので事情を話す。

 水没という単語が出た途端に、彼の表情が固まる。携帯保障サービス(月300円で、5250円払うと新品の機種と交換してくれるサービス)に加入しているのでそれで修理(というか交換)をお願いするしかないのだが、問題は代替機。なんと、この店に直接返しに来ないと貸し出せないという。こちとら旅の途中で北海道には今週しかいない。新しい携帯は直接家に届く。だとすると、家に帰るまでは代替機が必要になるのは自明の理。しかし彼は持って来れない人には貸せないの一点張りだった。郵送でもダメかと食い下がったが、とにかく直接来いとしか言わなかった。

 確かにルールもあるだろう。結局は商売だから無理が利かないのもよく分かる。でもこちらは旅先で困っているわけだ。そんなに無茶な要求をしているわけでもない。ちょっと融通を利かせてくれればいいだけなのに、マニュアル男は頑として首を縦に振らなかった。

 さて、困った。とりあえずの代替機を手に入れるしかないわけだが、選択肢としては、もう一回線新規登録するか、他のキャリアに乗り換えるか。近くの電気屋まで足を運んで調べてみるも、最低でも2万以上はしてしまう。しかもすぐ解約すると違約金が発生し、なんだかんだで総額7万ほど掛かってしまう計算になった。これでは話にならない。思案していると電気屋の店員が親身になって共に考えてくれ、安く上げるにはやっぱり携帯保障サービスの郵送をなんとか頼むしかないという結論に至った。自分的にも例のオトコに当たらなければなんとかなる気はしていた。頑張って下さいとの優しい店員の声を背に、またドコモショップへと戻る。

 先程より客が増えており、例の男は接客中だった。別の女性店員に通され、事情を話して説明すると、今回ばかりは郵送でも良いとの了解を得る。更に代替機は防水の機種にしてくれた。ありがとう。とても助かった。「せめて貴女のお名前を…」「名乗るほどのものではありません」 そんなこんなで代替機を入手することが出来た。ずぶ濡れになりながらのとんだタイムロスで、気持ちもびしょ濡れになったので、今日はもうどこにも行く気になれなかった。

■ 今宵はここで
 中標津町といえばそこそこ賑やかな街なので、宿の類もそれなりにあるハズだろうと思い付近を検索。現在位置から程近い場所に一件のビジネスホテルを発見する。しかもなんと1泊2食付で4200円という破格。徒歩圏に別のホテル(ここは素泊まり5250円)があり、温泉やコインランドリーも完備となればそこにするしかない。早速電話してみるとアッサリ部屋を確保できた。

 なんだかんだで時間も16時近くになっており、近くを観光する気にもなれなかったので早めのチェックインをお願いする。値段が値段だけにとても古いホテル(施設?)だったが、おばあちゃんの家に来たようなイメージで女将さんはとても感じが良かった。お世話になります。


二枚のガラガラ玄関といい古さを感じる(翌日撮影)
同泊者はやっぱり建設業?っぽい人ばかり
 部屋について濡れた着衣を脱ぎ、乾かそうにも暖房がない。電熱式?のヒーターのようなものが置いてあるだけだったが、3月までしか使えないと書いてあった。うーぬ、これじゃ乾かしようがないな…。仕方がないので、とりあえず部屋中に干せるだけ干してみる。

 最悪だったのは、鞄の中だった。防水バックとして買った今回のダッフルバッグ。どうやら完全防水ではないようで、チャック部分からかなりの浸水をしていたようだ。(目の細かいチャックだったから大丈夫かと勝手に思い込んでいたが…) お陰で中の着替えがびしょ濡れ。キャンプ用具ももちろんびしょ濡れになっていた。ヤバイ。これ全部一晩で乾かせそうにないぞ…。

 徒歩圏に、旅人用?のホテルがあるとの情報は得ていたので、そこで洗濯がてら乾燥機を使うことにした。なんなら温泉もあるようなので風呂も入ってしまおう。(泊まった宿の風呂は沸かしだった) ジャージに着替えて洗濯物を抱え、雨の中を歩いていく。

 メガネが可愛らしいギャル風のフロント嬢に事情を話し、中に通してもらう。洗濯機を回し、乾燥機も回しまくっている間に風呂に入る。入浴料は500円だったかな。洗濯機、乾燥機ともに数百円で利用できた。何気にコインランドリーを使うのは初めてだったりする。(笑) 一通り作業を終え、帰り際に先のギャル子と雑談するが収入はなし。何かしら情報が得られればと思ったんだけどなぁ。(決してナンパではありません)

 着衣と自分の洗濯、そして電気機器の充電が済んだら宿へと戻る。途中、ベスト電器(地方に多い量販電気店)があったので、ドライヤーを購入。乾ききらなかったものは、部屋でドライヤーで乾かすことにした。苦肉の策だね。

 宿に戻ると、夕食に呼ばれる。食堂に入ると、意外と言っては失礼だが割と豪華な夕食が並んでいた。なんでもこの宿、隣りが食堂として経営しており、食事の充実っぷりは口コミでも好評だったようだ。もちろん感謝して食べる。お櫃に沢山入ったあったかいご飯を無駄に頬張ったのは言うまでもない。(笑) ご馳走様でございます。


白身魚のフライ、麻婆豆腐、ナスとネギの煮物に刺身
アサリの味噌汁がなぜかとても美味しかった
 部屋に戻ると早速乾燥開始。延々ドライヤーで乾かし続け、ほとんどのものが仕舞えるレベルになった。ふぅ、これでようやく眠りにつける。全く持って散々な一日だった。明日は予報では雨ではないらしい。今日これだけしか走れなかった悔しさを、全部ぶつけてやんぜ!

 連日の雨でページが波打つツーリングマップルを眺め、じっくり明日のルートを考える。例によって朝食は30分早めてもらう。明日は朝食抜きでもいいくらいだけど、折角出してくれるので有難く頂くことにする。(値段的には大概変わらない) 隣の部屋のオヤジの話し声が丸聞こえなのはご愛嬌。(壁が薄すぎる!(笑)) 誰かが廊下を歩く音が地鳴りのようだ!(建物が古すぎる!(笑)) が、風雨が凌げるだけでも有難いんだ。大自然に揉まれると人は謙虚になります。(笑)

 天気が天気だっただけに画像が少なくて申し訳ない。文字だらけのレポートは、読み手も書き手も楽じゃないね。(笑) 最後まで読んでくれてありがとう。明日は今旅中、一番気合の入った観光になるハズだぜ。


▼ 本日の走行距離:220km(給油1回)


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